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かくいう私も青二才でね

知ってるか?30まで青二才でいると魔法が使えるようになるんだぜ?

麻宮さんの妹(2) あさの


麻宮さんの妹 (2) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)

僕が今一番(映画かOVA)映像化して欲しい作品である「麻宮さんの妹」がアマゾンでは2巻のレビューが1つしかないという不人気さに涙し、悔し涙をバネに「こんな素晴らしい漫画なんだぞ!俺のブログから読み始めて、誰か映像化しろよ!」と地道にレビューを書いていくだけの記事です。

全然反響がなかったら、SS書こうかなぁ?麻宮ひなたが色んな人や技術を介して旅する妹を見守る話でも書こうかなぁ…原作崩壊レベルのキマシタワーを混ぜ込んで、「これ原作何!」と注目を集めて読ませるような暴挙をやろうかしら(笑)

とにかく、2巻のレビューを始めさせてもらいます。

  • 女子のかわいいはその多彩さにこそある!見かけもデレ方も!

このマンガの作風として、「細かい作画崩壊をする」と1巻のレビューで言った。

作画崩壊」というとイメージが悪い言葉だが、うまいイラストレーター・マンガ家ほど作画崩壊をさせることで表現を強調したり、マニアゴコロくすぶるようなネタを仕込んで居る。
作画崩壊しないマンガ、アニメの方がむしろ簡単で、手抜きなんだけども…そういうことはあんまり言われない。

着痩せ・着膨れ、縞模様などによって「目の錯覚」が実際の人間を見ていると起こるようにマンガもまた服装やシチュエーションによって本来ならば、微妙に絵を変えるべきなんだ。

「麻宮さんの妹」の全三巻のなかでもっともマンガの技法に凝ったのが2巻だと思う。2巻では主人公の麻宮あおいに加え、満月ハジメが出てくる。この二人が旅館のシーンと屋外のシーンで描き方を繊細に変え、同じ人物なのに、人が変わったように表情やパーツ・縮尺などを変えてキャラクターを細かく演出してる。

例えば、麻宮あおいに限っていえば、囚われの身としてメイド服を着たり、変装して子どもっぽい服装になったりする。それに合わせた作画が行われつつ、さらにシリアスなシーン・ギャグや萌のシーンで等身や目の書き方を細かく変えてる。

逆に、「ノロ」というキャラクターは敢えて無表情にしてる。小さなコマを除いて、ちゃんと描かれているシーンでは表情や縮尺を一切変えない事で、彼女にミステリアスな感じ、腑に落ちない部分を読者に感じてもらえるように演出している。

これは感情表現の仕方にも出ている。

「麻宮さんの妹」に出てくるキャラクターの中で出番の多い「剣崎」「麻宮あおい」「満月ハジメ」「麻宮みどり」についてはデレ方も一つじゃない。相手への信用や行為を作中で表現する時も、単純に笑うだけの描き方をしない。

無表情な「ノロ」でさえ、相手に対する好き嫌いがわかるような描写がされている。よく人間観察した人の描き方だと思う。

例えば、英語で「好き」と言いたい時にlike,love,be fond of~,favorite,take to~などの表現があり、人は無意識にその「好き」を使い分けてる。「愛してる」もあれば「イイネ!」もあるし、「あそこのパン屋のカレーパンがお気に入りで…」もあるし、「好きになりました」もあるだろう。

「かわいい」「萌える」「見蕩れる(蕩れ)」「微笑ましい」「愛らしい」など二次元・三次元問わず、かわいい女子を見たときに僕らが言うセリフは沢山あり、その数だけのかわいらしさや絡みの描き方がある。「麻宮さんの妹」という作品は「萌える」「かわいい」を3巻というわずかな尺で複数の描き方してる。

たとえば、「怒る」という感情表現が相手にできるのだってデレのひとつといえる。本当にどうしようもない相手には怒る気さえわかない。「笑うことで無関心や臆病を表現する」ことだってできる。

そういう人間臭いモノを描く作品が減ってしまった今日では、これほど細かく作り込まれた作品はそうそうない。(アマゾンで評価が1つしかないが、「麻宮さんの妹」のなかでも2巻はそういう観察力にずば抜けてる。)

  • 超人でも一人じゃ生きていけないし、ボンクラでも必要なときがある。

西原理恵子は「新人が使えないんだがどうしたらいい?」という相談に対し、「ネジだと思って使える部分に当てはめてやればいい」と答えたことがある。ちなみに、トヨタという会社でも「うまく働ける場所に当てはめられない上司が悪い」と考えるそうな…。

短絡的に「お金を持ってる・もってない」「学校や会社での成績が良い・悪い」で人の事を無能だの人間失格だの、底辺だの言う人がいますが…まぁ、そんなことは間違えだ。「何もできない人」という方が珍しくて、大半の人は何かはできる。その「なにか」を見つけて作中でキャラクターを活躍させる。その姿勢が素晴らしいと思った。

威勢のいいだけのチンピラだったり、腹黒いけど面倒見のいいお姉さんだったり、それほど良い部分が大きいキャラクターでなくても、良い部分が見えるように作られてる。反対に、超人的な万能キャラが「人のために何かしたい」とか「大きすぎる目標の前に悩む」とかそういうことを強調して描いている。

  • マンガ家一人でマンガなんか作れない!

2巻の「作者近影」に次の言葉が作品に投影されているように思える。
「連載が始まって一年が経ち、引っ越したり色んな人と会ったり色々と物の見方も変わってきたような気がします。自分の手に届く範囲は狭いけど、その中で思いっきり手を伸ばして漫画を描いていこうと思うのでした。」

別に現場経験があるわけじゃないが、マンガ家って作者自身が言われるほど作者はスーパーマンじゃないのですよ。アイデアは他人がいてこそ調達できるモノもあるし、編集者がいなきゃ綺麗な作品にまとめきれないこともしばしば。もちろん、編集者だけだって、出版社や印刷屋、書店の関係者だけだって仕事にはならない。

「麻宮さんの妹」の作者である、あさの氏は1990年生まれで僕よりも1つ下。作者自身、「みんなができることを繋ぎ合わせて、やっとひとつのものが出来上がる」という社会の仕組みを経験則としてなんどもなんども見て・参加して実感が湧いたのが「麻宮さんの妹」の連載だったのだろうと僕は推察したい。(※連載始めたのが二十歳とかになるんだけど…二十歳でこれ作れるの?天才かよっぽど良いスタッフさんに恵まれたかなんだろうね。)

これは「神様のメモ帳」というライトノベルのテーマ性にもなっていたことだけど…「一人でも生きていける社会」になったからこそ、大人にならないと「できることをただ当たり前にする」とか「人の役に立ちたい」って事の大事さがわからんようになってしまっている。

学生の間にはその実感がない。いや、ある人もいるのだけど…学校終わってから予備校や塾に行って、役所や会社で数字や名前をいじって一生を過ごすにはそういう感覚がない。そういう人を軽蔑するとかしないという話ではなく、それも「一つの役割」で優劣ではないと言いたいのだ。

そこらへんが事務系や研究室よりも何かしらの現場(営業や販売でもいいし、モノをつくる作家や制作担当でも)にいると見えやすいんだけど…学校ってどちらかというとそういう場所じゃないんだよね。

連帯責任で勝った負けたとかそういうのはあるけど、「自分が頑張らないと周りが困る」「誰かに頑張ってもらわないと自分が困る」と切実に思うほどのプレッシャーは学校の中では乏しい。別に部活で負けても死にはしないが、稼ぐ場所で損失を被れば、クビになって飢え死ぬかもしれない。共同作業で誰かを大怪我させてしまうかも。…そういうプレッシャーが労働にはあるが、学校にはない。よほど危険な実験をやる科学系の大学に行けばありえるけど…そこまでいかないとない。ガスコンロやアルコールランプで大家事を起こすほうが難しいし、組体操で手を抜けば自分も怪我をするからよほどの怨念がない限り、そんな真似はしない。

麻宮さんの妹で描かれる感覚のリアリティーであったり、キャラクターに共通して内在する気持ちよさはどこか、仕事をしている楽しさ・辛さに通じている部分がある。作者の言う「物の見方の変化」というのは一人で自由気ままに書いているときとの最も大きな差異に対して当てられた言葉のように思える。

「商売しないとわからない感覚なら学生向けの作品ではないのでは?」とここまで読んで思った人がいるだろう。たしかに、バイト経験でもいいから「自分がきっちりと仕事をこなさないといけないし、他人からも助けられないと1つのことが成し得ない」シーンに出くわした人の方がこの作品は共感できる。だけど、創作者なら誰もが共感しえる普遍性も持ち合わせていると思う。

僕もブログやたまに小説・SSを書く身として、アンテナを伸ばして情報を得ようとする。「麻宮さんの妹」の「旅」というテーマはそういうアンテナが伸びている人間の姿を描くのに最適な状況であろう。

よく「自分探しの旅」なんて言葉を見かけるが…あれは探しているのは自分ではなく、他人なんだと思う。他人を自分がいろんな基軸で見ることで、視野が広がり、下の場所に帰ってきたときに自分のいる環境を肯定的に捉えられる心理状態が形成されるのだ。

「旅」と同じぐらい視野が広くなるモノ。それが創作だ。下手・うまいにかかわらず、良いもの・新しいものを作りたいと考えれば、視野が広くなっていく。ネタ探しほど貪欲に目を見張るものもないし、人の話も興味をもって聞く。あるいはそれ自体が楽しくなるんだよね。創作するという行為自体の持つアグレッシブさに気づくとこの作品に共感できる部分は増えるね。書物でも絵でもなんでもいいんだけどアイデアを常に探している人間にとっては人と会うのは楽しい。見た目とは違う一面に気づくと「アハ体験」をした気分になれる。

掘り下げられたモノを観察する楽しさ。ひょっとしたら、「麻宮さんの妹」の本当の魅力はそれかもしれません。

麻宮さんの妹 (2) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)