読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

かくいう私も青二才でね

知ってるか?30まで青二才でいると魔法が使えるようになるんだぜ?

小売の経済学〜「需給」を動かす「販売力」の力を論じよう!!〜


久々に良い経済記事の案が出てきたので、書いてみようかと思います。この記事の元ネタをくれた前職の社長・会長・専務…そして宴会専務「テルシマ」に感謝し、捧げます。

  • 「製造業の経済学」と「小売の経済学」

供給サイドの経済学について大学で学ぶとほとんどは「製造業の経済学」である事が多い。これは僕が小売店・業で働き、実際に経営者達に聞くと「売るためのテクニック」について世間が如何に無頓着かを思い知らされた事に起因する。

製造業の経済学は「最適化」に焦点が当てられている。如何に受給を予測し、無駄のない人的・物的リソース、生産システムを完備させ、効率よく需要に対応するか?数量経済学・マクロ経済学ミクロ経済学を大学で学んだ範囲で言えば、全ては「数値化」し、「最適を求める」というところにゴールがあった。

だから、次のような事が「小売」に近い場所・もしくは「小売」そのもので行われる。
キャベツ最大700トン 出荷停止 緊急需給調整 : 岩手 : 地域 : YOMIURI ONLINE(読売新聞) キャベツ最大700トン 出荷停止 緊急需給調整 : 岩手 : 地域 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

イトーヨーカ堂 27年度メドに正社員を半減 パート社員比率を9割に引き上げ - MSN産経ニュース イトーヨーカ堂 27年度メドに正社員を半減 パート社員比率を9割に引き上げ - MSN産経ニュース

小売業はね…「最適」で売ったらいけないんです!なぜなら、「価格弾力性」は低くなる一方であり、店舗販売という業態を取る限りはそのお店の売上は「販売力」を付けないと下がり続けるからです。(それを避けるには「移動販売」という業態が最適です)

クレープ・果物・パンなど色んな移動販売があるけど、移動販売の強みは「価格弾力性が下がりにくい」事です。というのも毎日来なけりゃ「ここで買うしかない」という強迫観念を消費者に植え付けることができるのです。

「ここで買うしかない」と言う感覚は店舗にはありません。安売りしていない日はもちろん、安売りしている日ですら「なんだ。このぐらいなら来週もやるだろう」という程度の安売りではお客は来なくなります。言い換えると「店舗を置くということはお客が相場を知り、価格を客観的に判断できる」という事です。

…たとえば、移動販売だと「リピーターの獲得」では弱いです。だけど、「相場観がお客にないから、高めに売ることができる」という強さが移動販売にはあるのです。*1

あ、「景気が良ければ上がるじゃないか?」とかそういう反論は野暮なので、無しでお願いします。大前提は「静止経済」下でのお話です。成長も衰退もしない状態でのお話です。まして、景気が悪い状態・人口の減少が起これば、普通の需給調整を考えれば、「人員削減」は合理的な判断でしょう。

だが、ここで「人員削減」をしてしまえば、それは「製造業の経済学」だ。需給を先読みし、早々と手を打つ大容量を動かす経済学だ。…だが、小売業は一日一日の売上が天気や地域のイベントなどで細やかに変化する繊細な産業である!!細かな受給予測なんぞ「神のみぞ知る」というぐらいなモノである。それが「不足を出さぬよう」と守りに入ってしまえば、売れる機会を逃してしまう。(そして、機械化しきれない小売業は常に「達人」が現場にいる。そして、それの数だけ会社の強さになる。)

何が言いたいのか?「小売には小売にふさわしい経済学がある」と言いたいのですよ!!

  • 一坪当たりの売上にこだわらない「小売店」は「倉庫」と同じ!ロボットにやらせりゃいい!

店舗販売もしくは「置き売り」ならなおさらです。「人件費」の概念を持ち込むなら「頭数を揃える」よりも「販売力がある少数精鋭集団」にしたほうがいいんです。

前職が小売だったから言いますが、一人で10人分の仕事ができる人もいましたし、私だって3人分ぐらいは稼げる。ライバルの10倍の生産力を誇る機械…なんてそうあるもんじゃないけど、小売には「ライバルの10倍稼げる達人(チート)」がいることがザラにある。小売は「販売力」です。やりくりすることじゃない!!販売力で「余計な買い物をさせる」「リピーターをつくる」「商品知識を駆使して信用を勝ち取る」「その商売をうまくいかせる「神様」を見つけ、その人に愛される」テクニックを店員を一人でも多く作ることこそが小売業なんです

「小売の経済学」と「製造業の経済学」の大きな違いは小売の経済学は「需給構造そのものをイジる経済学」で、製造業の経済学は「需給構造を読み解いて最適化をはかる」経済学なんです。*2

具体的にどんなことをすれば「小売の経済学」っぽくなるか?そこを論じなければ、この記事を書いた意味がありません。そこで先程の「キャベツの出荷停止」のニュースをケース1、「イトーヨーカドーの正社員削減」のニュースをケース2として私の言いたい「小売の経済学」がどういうものかを説明していきましょう。

ケース1 『ニュースになる』という販売力
キャベツの出荷停止のニュースを見るとこんなことが書いてある。

『出荷停止となった農産物にかかった種子代などの経費は、国と生産者が出資した基金から交付される。』
…ほうφ('-'*)国からお金が出るのか…。

だけど、700トンもキャベツが余っているなら、来年のキャベツの需要が上がるような「新規開拓」を国の補助金を使ってやっても同じではないのかね?むしろ国内で「野菜離れ」、中国で「日本産野菜・果物は安全」と言われているならば、彼らの消費量を増やすために何かしたらいい。(もしくは値崩れ分を補填して通常通り流通させても良いが…これだと、来年のキャベツの需要が増えない。)

真面目な話、キャベツなんぞ安くて大量に食えるモノなんだから、若い人が「安くて美味しいキャベツで自炊」ともなれば、一気に消費量は増えると思いますよ?加工食品用として企業にサービスして多めに売ってもいいし、中国や食うに困ってる国に投げまくってもいい。でも、僕のオススメは「ニュースになるようなキャベツ祭りをやれば?」という提案だ。

昨今、商売をする上で「ニュースになる」ということは大きな儲けを生む。具体例を上げると「UNIQLO」と「AKB48」はこの「ニュースからモノを売る」という手法に長けている。UNIQLOだと最近なら「ヒートテック」、一昔前なら企業やアニメ作品との「コラボTシャツ」など、話題になることをやっては売上を伸ばしてきた。AKB48だと、メジャーになってからは総選挙やメンバーの移動などが一々ニュースになるため、AKB内の内部闘争を積極的に報道させた。(AKBファン以外にははた迷惑なんだけどね。)

町おこしにギネスに挑戦する…なんてよくやるけど、そう言うやり方もありだね。
いっそ「日本一大きなお好み焼きをつくる」ギネスに挑戦を大阪と岩手県でコラボしてやったら?あやかりたい都道府県・企業みんな集めて卵や豚肉や小麦粉まで集めちゃったらいい。…実感がわかない?

実体験をすると、商売をしてておしゃべりおばちゃんや自営業のおばちゃんに好かれた日はかなり早い時間に完売を達成する。「あのお店が安い」「あのお店が美味しい」「サービスがいい」「商売を心得ていて気持ちがいい」と言って、情報を拡散してくれる。お客がお客を連れてきてくれる「永久機関」ができあがる。商売の面白いところは「客を呼ぶ上に、自分もたくさん買ってくれる【神客】」が意外とそばにいること。

「ニュース」というと天下泰平のことのように考える人がいるが、「街の噂」だってニュースだ。ニュースを提供する商売人になれば、それは人を集める。一般の経済学では「売上=売上個数×価格」だけど、小売の経済学だと「売上=話題性×販売力」になる。些細な話題性を積み上げる。行列・おばちゃんの評判・営業中の活気…些細なことを重ねて話題になっていく。

価格なんて、可能なら変えればいいんです。「半額なんて悪いよ」というなら定価で売ればいいし、「もうちょっと安けりゃ買う」「おまけしてくれるなら」というなら、おまけしてやれば売上はできあがる。

え?まだ信じられない?だったら、このブログに来ている理由を言ってみな?「とある青二才」が話題のブロガーだからだろう?(悪名は無名に勝るのです。悪名高いと思って僕のブログを身に来た人が5人居れば、一人ぐらいは「いいブログじゃないか」と言って帰ってくれるような記事を書いているので、悪名でもどんどん名前が広がればいいんです。)

このブログがどういうブログか知っている人は僕が言うと説得力をかんじるのでは(笑)

ケース2 「そこで買っても得がない」ヨーカドー
イトーヨーカドーと正反対のケーススタディーを1つ。

東京都民なら「オオゼキ」というスーパーをご存知だろうか?品川・太田・世田谷を中心に30店舗ほどあるスーパーなのですが、彼らが言うには業界で最も1坪当たりの年間売上が多いのはオオゼキだという。

その秘密は「社員率6割、地方から出てきた高卒には寮を完備。骨の髄まで商売の感覚を染み込ませる生活を送りながら、ひとりひとり裁量(逆に言えば仕事量)を多くして、給料をたくさん払う」という最近の小売とは真逆の特色を持った商売をしている。

ちなみに、ヨーカドーは7割がバイトである現状。ニュースによれば9割バイトにしてしまうという。
確かに、社員の権限は大きくなるのです。しかし、アルバイトに責任がかかる仕事をさせられる以上は「決断をくだせない店員」「限られた専門知識しかない店員」が売り場を行き来することになる。

あらゆる大型スーパーに言えることなんですが、「効率化」「システム化」によって安くて品揃えが良い会社を目指そうとしているが…これは大間違えだ!!(少なくとも日本では大間違えだ)

カルフールが進出してきて失敗しちゃったのがいい例なのかな?兵庫時代に明石の方にあったカルフールに行ったことあるけど、店員の姿がレジ以外ほとんどないのね。だだっ広い売り場でひたすらウィンドウショッピング。(※西洋かぶれの母は「鳥の丸焼き」に、妹は「お菓子の袋詰め」に大興奮でしたが…はい。そういう家庭だから「青二才」が育っちゃうのです)

オオゼキでも、古き良き商店街でもいいのですが…お店とお客の距離が近づくと、相場だけではなく店員から知識や良いものの情報が吸収できる、オマケができるお店は強い!!箸の上げ下げまで本部に統制されてるヨーカドーには無理な話ですが、リピーターになるメリットがあるお店でないとやっぱりそこにはこない。

バイトにできることは顔を覚えて声をかけることぐらいですけど、仕入れ・加工までやってる人は商品知識や相場の話しも語れるし、価格決定権まである人はオマケや抱合せ販売だってできる。

権限があれば、あるほど単価上げやすいが…ヨーカドーは全くその反対だ。それどころか「安けりゃなんでも良い」状態になっているので、ネットにお客を取られる。「規模の経済」は確かにネット上の商売では強いからヨーカドーは店舗よりもネットに力を入れたら良いかもしれない。(ネット商売の弱点は「単価を上げる」事が難しいんです。対面じゃないから、押したり、おまけしたり、接客で相手の気分を変えたり…そういうことができないのです)

実体験をすると…僕ね「お兄さんからなら買う」「今度からお兄さんの時に買う」って言われたことが何度もあるんですよ。*3

え?ヨーカドーとオオゼキは違う?…分かったよ。最後にこの話するよ。

  • アメリカ的な「巨大スーパー」は日本じゃ受け入れられない。

ヨーカドーに言いたい事は…「ヨーカドーが有利な時代は終わった」という事。

確かに「安い」「なんでも揃う」というのは、淡白に「モノにアクセスする」事を重視して買い物する人には便利なサービスなんだ。ダイエーでもイオンでもヨーカドーでも全部そう。ああいう「大型スーパー」の弱点は「固定客」が取られやすい、単価が上げにくい…という事。

そりゃ、移動販売より品揃えがいいし、小型店舗よりは安い。だけど、彼らに比べると単価を上げにくく、おまけに「ここじゃないとダメだ!!」というこだわりの1店にはなれない。

そもそも大型スーパーの「大量消費」の文化は欧米のものなんですよね。特に都市では商域が狭い小型スーパー・商店が沢山並んでいて…東京なんぞどれだけ商店街があることか。日本の人口の半分にあたる都市の住人はヨーカドーの店舗を使うメリットがほとんどない。安くて、楽なことにこだわるなら店舗よりもむしろネットスーパーの方が余計なものを買わずに済む。買い物そのものの質を楽しむならなじみの店に行くのが一番いい。(「港区」「千代田区」みたいな場所じゃない限りは東京にはその街の商店街があるから、なじみの店って意外と簡単にできる。)

そう考えるとヨーカドーって「食品専門の宅配サービス」に移行したほうがいいのかもね。配達拠点になる店舗を20、30キロに1つぐらい取っておいて24時間稼働にしてしまう。朝は配達・昼は店舗・夜は入荷でそれぞれの機能を1つの店舗で担ってしまう。(物流拠点が既にあるなら、別に併用にする必要はないけど。)

ヨーカドーに残された選択肢は2つしかないと思うんです。
1つはアメリカ的*4に商域がバカデカい店舗・ネットスーパーに移行していくこと。もう一つは社員率を上げて単価を上げる日本型にする事。

社員1割バイト9割…これは地方の主婦には嬉しい事*5だよ?だけど、日本のほとんどの消費拠点は都市*6だから、都市で儲けるような構造を考えなきゃどうしようもない。
日本人はほぼ毎日スーパーにぶらぶらと寄るんだから、「毎日来るメリット」がある店舗でないとやっぱり弱い。こんなの経済・経営の本には書いてないけどね…ちっちゃい会社・規模で商売をやったことある人はみんな気を使ってる。

小売業なめんなよ!よく肉体労働みたいに言われたり、学生から「コマ」みたいに言われるけど、自分で1から10までやれば、奥深い商売なんだよ!!しんどいけど、すごく楽しいんだよ!!

わかったか!!

ユニクロvsしまむら

ユニクロvsしまむら
著者:月泉博
価格:680円(税込、送料込)

オオゼキに関する書籍がないのが残念だなぁ。あんなすごいスーパーそうそうないと思うんだけどなぁ。

*1:備考・移動販売の弱点は「大規模化・効率化が難しい」のですよね。売り場のポイントが限られている上に「価格弾力性」を高く維持するために時々来ない時期をつくらないといけない。農業で言うところの「休耕地」の概念だと思ってもらえれば結構です

*2:一般的に「経営学」と呼ばれるものは「小売の経済学」に近いですが…経営学は組織論やリーダーシップ論みたいなものも全部含んでいるから「経済学と経営学の違いです」と言っちゃうと語弊があるので、独自の言葉を作って分けさせていただきました。

*3:そして、こういう絆は商売をやってると色んなところで芽生える。宴会専務のテルシマさんと仕事をしたときには女子大生の彼女ができちゃった…というから驚きである。その次の日、会社中で噂になりました。

*4:アメリカの…特に郊外だと巨大な冷蔵庫・冷凍庫に何十日分の食料を買いためて貯蔵する事がよくあるそうです。これはアメリカの国土が大きすぎて、毎日買い物に行ける程度に鉄道網がしっかりしてる場所ばかりでないことに起因します。

*5:下妻物語という映画で町中がイオン漬けになっている描写がなされているが、これは本当です。人口10万人以下の地方の市町村では「稼ぐのもイオン、買うのもイオン」という主婦がざらにいます。雇用の枠が増えれば「子供がいない間にパート」という主婦が増えて地元にはいいのかもしれないですね。

*6:日本の人口の半分が三大都市圏であることに加えて、地方には1次産業従事者であったり、あまりモノを食べない(自分で作る)お年寄りがいるから、全国区のスーパーなら売上は年に集中する