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かくいう私も青二才でね

知ってるか?30まで青二才でいると魔法が使えるようになるんだぜ?

戦略プロフェッショナルシェア逆転の企業変革ドラマ  三枝匡

読書日記

朝の20分でかけるところまで、読書日記を書いていきたいと思います。今回は久々(堀江貴文著「拝金」以来)の経済小説。

聞き慣れない名前の人かもしれませんが、筆者は実際はコンサルタントを経由して実際にそれなりの会社の社長(規模はそれなりなだけで評価的にはかなりいい会社)の社長にものちになる人です。書いたのが2001年と古めなのですが、結果を出した経営コンサルタントが80・90年代の日本経済をどう見るかということには非常に興味があったので、いい勉強をさせてもらった。

戦略プロフェッショナル―シェア逆転の企業変革ドラマ (日経ビジネス人文庫)

お品書き

  1. バカと戦略は使いよう
  2. サラリーマンの代わり
  • 戦略がダメなんじゃない。

私は学問を学ぶために留学した人の発言にはかなり注意して聞くようにしてる。というのも、ただの「おかぶれ」が世間知らずに「自分が外国で見たものは日本のそれに比べればずっと素晴らしいのだ」と大見得切って言う姿をテレビなり、人の本で見る事が多かったからだ。…あるいはウチの家庭が外向的な人間が多くて、「日本よりも外国に時代はあるんだ」という意見が多いから、私はほとほといい加減にしてくれと思ってる。

だが、「何が良くて何が悪いか」という情報を選べる人間が語る「外国のここがいいね」はあてになると思う。

この作者にはそう言った「情報の選び方」を評価したい。逆に、「日本のここが良い、ここが悪い」もはっきり選別できる人間でないとそれもうまくいかない。「日本は誰がなんと素晴らしいんだ。万歳」では話にならん。(言うこと自体は否定しないけど、ロジックがあってなんぼなのに、その結論だけを求める人がいるから、せっかくの良さを潰してしまう。これは親米でも、愛国でも両方とも同じ。)

本作では、日本の良さの部分をオチにしながらも日本の企業体質の問題点や戦略の有効な使い方を書いている。

まずは問題点だが…これは日本の英語教育を見てるとわかりやすい。
日本人は英語が話せる自信がないだけで、英語自体の知識はそれなりにある。中学英語でもちゃんとやれば洋楽を訳したり、海外で目的地まで行くことができるが…「話せる」という裏付けもなければ、使ったことを反復したりする機会もない。

それに、綺麗な英語を見知らぬ青い目の大男は話せば、心理的には怖い。気の強そうなパツキンのねーちゃんが話すのも同じ。英語が「わからん」ではなく「話せない」。話せない理由は知識ではなく「話す度胸」だったり、「使いこなすスピード感」が身についていないことにある。

…私ですか?そんなものありませんよ。英語が中心になる商売自体に「いや、それってどこまで行っても日本人不利じゃん!」って考えてる人だから、英会話に興味がないのです。英語という言葉を調べるのは好きだけどそれ以上の感情がない。

この話を「キャリア」にするとこうなる。
役人であれ、大企業であれ、日本の企業には勉強・留学・体験させてもらえる機会がいっぱいある。資格や学位を持ってるのに、それを使って何かするにはリスクが大きすぎたり、機会そのものがなかったりして、会社の中の人資源がいつまで経っても良くならない。

そもそも異常なんです。社内ニートを問題視する記事と、過労死を問題視する記事がネット上で一ヶ月の間並ぶ現状がおかしいのですよ。

少し頑張ればできることではなく「時間をかけて使えるように練習させること」はさせない。日本の企業はそれで人材を取られる。「せっかく学んだのに」「せっかくこれが出来るのに」という事が仕事の中で活かせない。減点法の評価、ムラ社会的な内向きな組織が失敗や未経験者に対して冷たくなる構図を作ってる。

そして、経験者に負担が増えていき、経験者も全部を見ることができなくて組織は沈没する。

…当ブログでは何度も言ってるが、組織を強固にしたい時にはナンバーワン・ナンバーツーをリーダーにしちゃいけない。ベンチ入りか、末端のレギュラー選手をリーダーにして層としてチームを作り上げる。僕はこういうリーダー論の持ち主だが、日本人は何でもやってくれる、頼りになるカリスマを持ち上げすぎて、彼らが老朽化するか、独裁者になるまで酷使するから良くならない。

社長ではなく、外様の企業参謀として辣腕を振るうという設定が素晴らしいね。だからこそ、組織を好きなようにもしすぎず、全部任されることのない「戦略」という一分野に絞って話ができる。

この本の大きなテーマは「戦略を使いこなすこと」と「実践が伴うプロフェッショナルになること」だが、戦略が意識や末端の現場を良く変える像を描いているところが素晴らしい。作者自身が批判するように、私も80年代のアメリカの経営…目先の利益を負って、儲かるものしかやらない・労働者を平気で解雇するやり方を「戦略」と呼ぶなら大反対だ。しかし、そういったものではなく「兵法」のように自分の味方を効率的に動かすための経営戦略、営業マンの心理から見て戦略側が言わないといけないことまで考え抜かれているから素晴らしい。

  • サラリーマン以外の生き方が見つからない

戦略の話も非常に素晴らしいが、それ以上に私が感動したのが「サラリーマンにすがりつくのはサラリーマンの代わりとなる魅力的な生き方を見つけられないからだ」と述べてくれたことにある。

マスコミ報道には非正規雇用を一食反に差別・軽視してみたり、金持ちや経営者にルサンチマンを振りまいて、あたかも「サラリーマン」を良いもの扱いし続けている傾向がある。

だが、我々40より前の世代からすれば、全員が味わえる幸せでもないし、現場で過労死したり、人を追いやってやっと給料袋を分厚くする「骨肉の争い」になりつつあるのだから、決してそれが素晴らしいというものじゃない。

だが、報道はバブル以後の世代ばかりをむいているから(そして、デスクや業界の平均年齢も高いから)いつまでも「サラリーマンは素晴らしい、フリーターも成金社長もけしからん」になる。

私はそれを企業人として生きた人が言ってくれた事で胸の当たりのもやもやが取れた。…取れたは大げさでも仮説としていたところがあたってスッキリした。


この本の最大限評価したいところはそういった指摘を10年も前にしていたところ…そして、ブロガーの中には堂々とニート宣言してる人間・拝金主義と罵られても栄華の限りを尽くしたIT長者がその後の世に現れていった事。そこにあると僕は思うのです。


戦略プロフェッショナル

戦略プロフェッショナル
著者:三枝匡
価格:680円(税込、送料込)