読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

かくいう私も青二才でね

知ってるか?30まで青二才でいると魔法が使えるようになるんだぜ?

【アニメ評論】劇場版「けいおん!」 

アニメ 映画の話

映画の中で全部語っているのに、メディアからインタビューされても困る。…後ろの映画が全部語っているのに「テーマはなんですか?」とか聞かれた日には腹が立って仕方がない。(宮崎駿 出典・【宮崎駿×黒澤明対談】より)

今話題のけいおんをこれから年末年始に入ると見に行く人が増えると思うので、私なりに楽しみ方・みどころ・解釈なんかを書いていきたいと思います。(映画を見ていない人は本文だけ読んでね。注釈の方が2倍多いですが、これはもう既に見た人のための解説となります。)

まだ、映画を観ていない人のためにネタバレを含むシーンは注釈文としてかかせていただきます。

映画版けいおん!は三回見ないとフィルムが貰えない仕様なのでリピーターが見ても面白いと思えるぐらいの評論を書かないと「なんだこれ?」って話になるので…私も評論書くために二回見ました。

お品書き

  1. 高度なアニメーション技術・声優演技の結晶
  2. けいおんは努力の話であり、成長の話である
  3. けいおん部が画面の中・外問わず愛される理由
  • もう、「萌えアニメ」だなんて小馬鹿にさせない!!

ジブリとディズニー無しで良質なアニメーションを20本言える人なら、あのけいおんの映画を観てドキドキしない訳がない!

どうしても、アニメの評価というと「CG」とか「動く戦闘シーンの作画」に行きがちなのですが、けいおんを見ているともっと奥深いものだということを身をもって体感する。

私がけいおんの映画を見るときに技術面でみてほしいのは「声優」と「カメラワーク」なんですよね。…もっと色々あるけど、声優の演技と、一つ一つのカメラワークが持つ意味をちゃんと解き明かせると、アニメが10倍楽しく見られる。

「そんなのテレビでも絵コンテなんとかすりゃできるじゃん!」とおもうかもしれないけど、むしろ、けいおん!の良さはそういうところです。映画だからと言って世界観をぶち壊して派手なことをしようとするのではなく、堅実かつ深く「いつものけいおん部」を掘り下げて描く。(地味だけど、金がかかる事をさりげなくやるんです…作画枚数を使うシーンを作ったり、製作にリスクがかかるアニメ技術・演出を入れたり…)

京都アニメーションらしいですね。京都アニメーションというとオタク初級者の入口になる作品を多く制作しているため、「初心者向けのゆるいアニメ」を作るアニメが先行してるイメージがあるが、映画版になるとむしろ京アニの方がマニアックになる!!*1

けいおん!はそういう「マニアックな演出」がすごく多い。

まず、声優の演じ分けがすごい。わざと棒読みにしたシーン、迫真の演技の部分、うわのそらになっているシーンなんぞは声色が…「声優ってこんなにすごい商売なのか」と思わされるほどよく別れている。*2歌一つにしても「すごく上手く歌う」シーンとそうでもないシーン、力が入っている声をいれつつも走っている感じにしている部分などがある。*3

だけど、最も感動するのが「息だけで演技をする」というシーン。息の抑揚を吹き込んで、キャラクターの感情を表現するシーンがあるのですが…これがすごい!!*4

次にカメラワークですが、これは前半部と後半部で大きく変わっているところに注目して欲しい。様々なパターンのカメラワークに挑戦しながらも、「ここはこれが言いたくて、こういう気分を出したいからこの撮り方なんだ」というメッセージがよく伝わってくるできになっている。

ネタバレを避けるために、本文では大雑把にしか言いません。前半部はアクロバティックというか、ダイナミックというか…そんな感じです。*5後半は【目線の高さ・場所】が特定できるような感じですね。それこそ、番組のジャンルが変わったぐらい違います。*6

もう一個注目して欲しいのが、プレスコ(?)だと思われる演出。…本当は断定したいのですが、誰も「ここプレスコじゃね?」と言ってくれないので、「すごく口パクの精度が高いシーン」としか今のところは言えない。*7

プレスコとはプレスコアリングの略で先に音楽や声を収録して、後からアニメーション(動画作画)を加える技法。

何がすごいかというと、下の動きや口の開きがすごく丁寧に描かれるのですよ!!

日本のアニメというのは予算が少なく・制作時間も非常に少ないため、口パクはスタッフの想像で入れられることが多いため口パクが強調されて丁寧に描かれるというアニメはそれだけでもすごい。(※それどころか口パクの動きを使わないために、ざわと人物を写す回数を減らす作品があるわけで…。)

有名な作品ではAKIRA涼宮ハルヒの憂鬱のライブシーンがある。Wikiによると新劇場版エヴァンゲリオン(破)もプレスコらしい。詳しくは以下の動画でご覧ください。1分ほどするとプレスコの話に入ります。

テレビシリーズを見ている人はもうこの一言で「ああ!」と思うかもしれませんが、けいおんのテレビ版・映画版に別のタイトルを入れるなら、僕はこれにします。
映画もまた、唯の心情的・感情的な変化があって、それが細かく描かれている。…すごい細かいところまで見ていくと「なるほど!」って思えるシーンがいっぱいある。*8

【なんとか】という社会学者・評論家がけいおんは成長を描いていない」とか言ってますが、けいおんは挫折も葛藤も描いてます!!日常系成分が多めなだけで、真当な青春作品だと私はあえて反論したい*9

けいおんの描きたいことは「友情努力勝利」じゃないんです!!勝つ・やり遂げるなどの結果論でけいおんを見て評論する評論家には「ジャンプでも読んでろ!ブックオフでナルトでも読んでろ」って言いたい。(ナルトやワンピース求めてる人にけいおんを見せても楽しくない。)

ちなみに、テレビ版のけいおん!を見た際にははっきり言って「なんでこいつらがいいサポーターに恵まれて、大きな挫折もなくうまくいくんだよ。ちょっとできすぎ!!」と思った一人ですし、落としどころが気に食わなかった。*10

映画版を見て考えが変わったのは「自分と同じ努力の量を求めるのはバカバカしいことだなぁ」と思えたのです。よく親が学校の先生が「勉強しろ」と威圧的に言うが、たいていの人は自分なりに努力しているのですよ。(そもそも、親や先生が本当に若い頃に努力家だったか疑問なわけで…)

けいおん!はそういう作品です。けいおん!がエヴァ以来の「新しい社会現象を起こした作品」だとすれば、その一つは「自分の努力を嫌悪せずにまっすぐ見つめるけいおん部員の存在」だと思います。*11

  • けいおん!に和・憂・純が出てきて、モブキャラまで美人に描かれる理由

結論から言うとけいおん部はけいおん部だけじゃ成り立たないからです。部室で練習して体育館でライブを重ねたテレビ本編からもわかるように、ライブを聞いてくれる学生がいてけいおん部なのです。

映画のキーになる部分なのですが、けいおん!の映画では4人だけではなく、モブやサブキャラの動き・発言にも注目して欲しい*12


さっきの続きとして【けいおん】が社会現象になった最大の利益を挙げる。それは
「協力してくれる仲間と協力されること、支援されることに感謝できるけいおん部の関係がちゃんと描かれていること」である。

他の作品に比べて、けいおんは和・憂・純・さわ子先生などのサポーターキャラが居るからあの部活が成り立っていて、けいおん部がそれに頼りっきりで「だから何かしてあげたいんだ」という気持ちを描くことが多い。*13

平沢唯の偉いところは自分がアホの子でダメ人間であっても、周りの人にお礼も言えるし、変なプライドも持たず助けを求めることも恥じない。*14

そんな平沢唯の成長を多くの人に見て欲しいと思い私はこの映画を特集しました。明日の土日やクリスマス・年末年始とこれから時間がありますので、是非とも見に行っていただきたい。

最後までありがとうございました。


参考資料

冒頭の言葉の出典です。

*1:最近、見に行ったテレビアニメの映画化だと東のエデン天元突破グレンラガンがある。どちらも良い作品だが、それらに比較すると京アニ作品は「涼宮ハルヒの消失」「けいおん!」ともに見えにくいところに凝ったことをやっていて面白い。

*2:デスデビルごっこのパートはわざと棒読みになってる。棒読み感をデスデビルごっこの時間が経つにつれてわざと砕いて、最後の方は遊んでるようにしか見えない仕様にしてある。全く逆なのが屋上で円陣を組む前後のシーン。真剣に律の演技を見てたら、ジーンと来ること間違いなし!!【うわのそら】と言ったのは「あずにゃんのための曲」を考えながら悶々としているシーン。

*3:前半部【カレーのちライス】と後半のU&I以降の歌い方が全然違う。それにOPについてもわざとらしいぐらいにふあふあ歌っているように思えるのは私だけじゃないはず!!あと「ごはんはおかず」については「すごく力の入った感じ」で歌っているように聞こえたり…

*4:「あずにゃんのための曲」を聞いた梓が、感動のあまり【言葉】を使わずに息の抑揚だけで気持ちが高ぶっている様子を表現するシーンがすごい!!

*5:前半部は唯の言う「ワールドワイドでロックな」という演出です。本物のライブDVDでも見てるような上から、下から、枚数を使う回り込み作画も駆使して、ライブ映像が移されてます。特に「ごはんはおかず」前後がすごい!ライブ前の鳥がロンドンアイの横を飛んでいくシーンなんぞ「あんなのどうやって思いついた!?スゲーよ」と言いたくなるようなシーン。上・下・遠く・アップなどシーンによってすごく変えている。

*6:帰国後のパートはU&Iのライブシーンを中心にすごく面白いことをしてる。U&Iの中では唯がたった一人でアップで映るシーンがない。画面の中心には来ますが、モブや梓が一緒に写っている。また、【屋上の走るシーン】や【あずにゃんのための曲の練習風景】などは誰かが密着取材をかけていたかのようなドキュメンタリー番組のようなカメラワークになっている。帰国後はその「ドキュメンタリーを取るカメラマン」の視点が中心になっていて、上から下から…通り全部を見渡せるほど遠くからというカメラワークは減ってる。最後の演奏の前はほとんどが誰かの目線、何かモノから目線(U&Iの後ろから撮ったシーンと、演奏を終えて、上から移したシーン)になっている。

*7:【あずにゃんのための曲】のシーンで、それまで正面から移すシーンはそれほど多くないのに、いきなり口の動きに目が行くような正面からのアップシーンが数分続いているシーンがある。

*8:唯の成長を表現するシーンで特に注目して欲しいのはけいおん!作中の起きるシーン。テレビ版1話については遅刻ギリギリでパンを加えていた。それが少し経つと憂が起こしに来て起きるようになる。そして、映画の最初のシーンはアラームで自分で起きる。更に、後半のシーンでは自分で朝早く起きてギターを弾いている。唯に関連して注目して欲しい演出はあと2つ。1つが【先輩らしいことをしたい】と唯が言い出すこと。あれを澪が言い出すならわかるけど、唯が言い出した事がすごく重要。映画全体の流れとしては(本質を述べると)唯が大人になりたくて、ロンドンまで自分探しに行く話なんです!!「ロンドンにいる私達」とデジカメを澪と構えたのがすごく大きな証拠で、唯はどこにいようとも「私(達)がどうなるか」と言う事に本質的な関心はあって、ロンドンでも考えるのはあずにゃんの事ばかりになる。もう1つが【鳥の演出】であれには本編中でフラグを回収する「翼」という意味と、もう一つに「幸せの青い鳥」という意味が含まれている。「幸せの青い鳥」を探して、最後は身の回りにあることに気づくというお話が元ネタですが、けいおんの映画はまさにそれです。ロンドンまで自分探しに行った唯が最後の答えは等身大のところにあることにロンドンの帰路で気づき、ライブを経て、梓の事を考えたときに「梓がいるから私は成長できる」と悟る。テレビではその役が憂だけど、音楽的に成長できるのは梓のおかげであるため、幸せの青い鳥=梓という描き方はすごく納得がいく。

*9:映画版でも唯が歌詞や曲作りに悩むシーンが強調されています。テレビ版についても唯が喉を壊したり、澪が作詞のスランプに陥ったりしている。

*10:※アホの子で押していた唯がみんなと大学に受かっちゃうところがすごく「全国の受験生に謝れ」という気分だったわけです…。映画を観るまでは「消極的なアンチ」でした。

*11:けいおんの前の作品には2種類のどちらかに分かれた。努力を描く作品と描かない作品。努力を描く作品は苦悩と達成感をついにして描き、努力のない作品は文字通り「ほのぼのふあふあ」の日常系として収まった。けいおんは「ほのぼのふあふあ」の原作をベースにしつつも、アニメ版で音楽要素をしっかりと付け加え、挫折や喧嘩するところも少なからず描くことで「青春ドラマ」として新しい比率・路線を切り開いた。そこがけいおんの強みではないでしょうか?

*12:モブがあれだけ映画ではしゃべる・それぞれに細かく動いているところを見ると、けいおんという作品が如何に「主人公強調」ではなく「群衆に持ち上げられた、あるいは群衆の中の一部の主人公」なのかがわかりますね。

*13:感謝という点でちゃんと解説したいのが映画のU&Iのパート!私はYou=憂だと思っていたのだが、中学生でもわかるようにYouというのは【あなた達】という訳し方もできる。最初のカメラワークの話の際にU&Iでは「唯のアップがない」と言ったが、あれは「唯には常に誰かが見守っていてくれるから、けいおん部がここまで来られた」という話にしたくて、ああいう演出になってる。唯が梓に語りかけたあとに客席に飛び込んでいくのは「これが私のあなた達への感謝なんだ!」という意思表示です。このU&Iのライブシーンは語ることが多いのであと2つ。1つはさわ子が怒られて、HTTが怒られなかった理由。あれは「音楽のジャンルの問題」じゃなくて、「何だか知らないけど怒られた」というさわ子の証言がポイントになってます。さわ子は「周りに持ち上げられて音楽をしてた」というHTTとは少し違って「自分がやりたい音楽を貫いた」から、周りから反感もあった。その関連で2つ目。先生が部室の中に連れ込まれるシーンがすごくポイント。「人脈や友達や感謝・素直さ・謙虚さ」ってモノは大事なんだというメッセージ性!!特に、音楽活動はすごく人脈がモノを言います。【友達の友達】とか【ファンの友達】というようにバンドやっている友達が草の根で自分の音楽を広めていっている姿を後ろで見ていたので、あの先生が連れ込まれたシーンを描く事を提案した人はすごいことをやってくれたと思う!!

*14:1話では自分の思い込みを謝るところから始まっているし、オカルト研やモブなどに気さくに話しかけることができる唯のスキルは点数にはならないけど、すごい。