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かくいう私も青二才でね

知ってるか?30まで青二才でいると魔法が使えるようになるんだぜ?

【はがないSS・三日月夜空】 夜空がゴスロリを着るだけ(後編)


昨日、「三日後にあげます」とツイッターでつぶやいた通り、はがないのSSを書いていたのですが…書いているうちに「これは長引くなぁ…」と思ったので、切りました。

前半はすべての前振りです。後半が書きたかったのですが、「夜空ってゴスロリ着ないよな?どうやって着せる理由を作る?」と苦心して、半日悩んだ挙句前半が書けました。
前回までのあらすじ
「女の子らしいなんて私のキャラじゃない」と思ったもののみんながかわるがわるメイド服を着るところを見て気になって着てしまう。そこに小鷹が現れて終わるはずだったのだが、ゴスロリにムラムラするようになってしまった。空気を読んだ理科がゴスロリをプレゼントしてあげた。(詳しくは前編参照)

  • 後編

夜空が小鷹とケンカした。…「今と10年前のどちらが大事だ」と夜空が問いかけて、小鷹が「えらべない」といい、夜空は「10年前」だと言った。その場では夜空が苦笑して収まったが、この話には実は続きがある。(と仮定してもらいたい。)

これは、原作7巻の140ページ前後の話141ページが放課後のケンカで、142ページには次の日に行くわけだが、私は141ページと3/5ページを書いてみたい。


・その日の夜

7時半、小鷹が風呂に入り、小鳩がゲームをしている羽瀬川家に電話が鳴る。
「あんちゃーん。電話なってるよ。」
電話を取った小鳩が小鷹に風呂場まで携帯電話を持ってきた。小鷹は小鳩を追い払ってから再度かけなおす。
「もしもし。羽瀬川です。」
「…わ、私だ。」
「夜空か」
声で夜空だと分かった。

「どうした?」
「い…今、お前のうちの前にいるんだが、上がってもいいか?…べ、別にいやならいいんだぞ。」
「いや、少し待ってろ。すぐに行くから。」
小鷹があわてて服を着て出ていくと、入り口で夜空が待っていた。

いつものジャージ…暗い所で見るとそう思った。
「どうしたんだ?」
「話があってきた。…時間はあるか?」
「ああ、あるけど。」
「そうか、ではお邪魔させていただこう。」

不機嫌…というと少し違う。緊張や力みのようなものを小鷹は感じ取る。だが、それに対して有効な声掛けがなく、淡々と玄関へ、居間へ夜空を通す。とその時だった。
「スカート…だったんだな。」
「…ああ。」
靴を脱いで夜空が上がるときに小鷹は夜空がひらひらのスカートをはいていることに気づいた。夜空は恥ずかしがって顔を背けながら、照れくさそうに応じる。…小鷹にはなぜ照れくさそうにしているのかよくわからなかった。


・居間にて
「それで?どんな用事なんだ。」
「…一度腹を割って話したいと思っていたんだ。」
「それは構わないが…って、なぜ脱ぐ!」

ジャージのチャックを下ろすと下から…
「お…これはなんだよ!?」
小鷹は驚く。理科からもらったゴスロリだ。…と言っても、デザインは(ゴスロリにしては)かなりシンプル。
上は白、下は黒、上半身は首の付け根からフリルになっていてその部分に黒いリボン、胴の部分に左右、首周りは鎖骨の辺りからフリルが付いている。下半身は黒いスカートで長さは長さは膝よりも少しだけ上。歩けば膝が上がって見えるぐらいで、ストッキングは黒。

(理科曰く「(何のイベントでも使えるよう)実用性、汎用性を考えて、知り合いが通販を購入したけど、曰くサイズが合わなくなったそうな…。それで貰ったんですけど、私は着ないのでもらってください。」とのこと。)

「…ま、まさかと思うけど、この間のメイドごっこの続きをやろうと言うんじゃないだろうな!!」
小鷹からすれば、ゴスロリというと小鳩かメイド喫茶にたどり着くからこの台詞はごもっともだ。
「…ば、バカ!そんなわけないだろうが!!」
それも夜空にしてみれば、考えの外のこと。

では夜空が何を考えてこれを着たのか?と言うと
「わ、私がこういう格好をして、部室だったり、お前と普段会うのはどう思う?」
と聞きたかったそうだ。
「…驚く。」
小鷹は淡々と答えた。
「そんなことが…」
「だけど、」
小鷹は言葉を遮って付け加える。
「いいんじゃないかな?似合ってると思うぞ。」

顔を赤くしながら…怒っている?なんとも欲求不満そうな表情で焦点がぼやけた夜空の瞳を小鷹へと向ける。
「あ、ありがとう。だが、そうじゃないんだ。」
「じゃあ、どうなんだよ?」
投げやりに小鷹は問う。どうでもいいという事ではなく『わからないのではっきりと物を言ってください。』という意味を込めていう。

長い沈黙の後、夜空は息を大きく吸い込んで話し始める。
「一つだけ確認してもいいか?」
「お、おお。」
「お前は『ソラ』の事を男だと思っていたんだよな?」
「ああ。」
(…何を言っているんだ?)と言いたげな憮然とした表情で答える。
「だが、私は女だ。」
「そうだな。」
「この事実を知った時に、どう思った。」
深刻そうな顔で夜空はにらむ。『驚いたとか安直なことを言ってくれるなよ』という眼差しで、何かある回答を期待している表情でこちらを見る。

「その事実以前に嬉しかった。それが男か女かというのはあくまで自分の先入観や記憶の中の話だからさ…。事実をそのまま受け止るしかないよ。」
夜空は欲しかった答えでも、予想した答えでもない事にきょとんとして、目力と言葉を失う。
「じゃあ、私がこういう格好をするのってソラのイメージから矛盾してないか?」
「イメージも何も夜空は夜空だろ?俺が今と過去を選べないといったのはどっちかを選んでしまったら、そのどちらかを否定してしまうことになるからだ。男だと思い込んでいた『ソラ』も、夜空もそれは連続性のなかにいる同一人物で別の人間じゃない。それとも、夜空。お前はソラを意識しているのか?」
「いや…そういうこともないわけじゃないが。」
…歯切れの悪い返事を夜空は返す。

ことごとく臨んだ返事がもらえないことに苛立ちながら、夜空はまた質問する。
「最後に1つだけ聞いてもいいか。」
「おう。」
「理科がかつて言っていたことだが、【男女の間に友情は成立しない】お前はそう思うか?」

小鷹に取って一番答えにくい質問が来た。
「俺が【友達が欲しい】と言っているのは【同性の】という意味でだな…」
「質問に答えてくれ。親密な女子はお前にとってなんだ?」

夜空の心配はこうだ。昔のように友達でずっと居続けたい夜空にとって、恋人という別の立ち位置に変わるのも怖い。だからといって、自分が女だと認識されている以上は友達という立ち位置が成立できないとなれば、夜空にとって大事な思い出が完全に過去の異物として、現在に持ち込まれると矛盾する存在なる。夜空としてはその「矛盾」が怖かった。怖かったからこそこの質問をした。
「たしかに、理科の言う通りかもしれない。」
小鷹が一言言うと、夜空は動揺して目の前の風景がグラグラと揺れ始めた。
「う、うそだよな?」
「待ってくれ。続きがあるんだ。だけど、恋仲なんてものは双方が納得しないと成立しないだろ?だから、恋人でもないけど、親密な関係ってあるんじゃないか?」
「小鷹はどう思うんだ?恋人とか友達とか…隣人部の奴らのことを。」
「…俺は今は同性の友達が欲しいと思う。だけど、隣人部も楽しいからそこはいる。…そりゃ、夜空からしたら釈然としない答えかもしれないけど、俺にとっては何の矛盾もない。第一、何かを選んで、何かを捨ててしまわないといけない事の方が不便じゃないのか?」

小鷹は極めて正直に答えた。ある種の曖昧さやご都合主義な言い分にも聞こえなくはないが、夜空にとっては衝撃的な発言だった。

「ありがとう。…今日は遅いから帰るよ。」
「そうか。」

夜空はジャージを羽織ろうとはしなかった。腕にジャージを抱えて、そのまま帰っていった。

(終わり。)








  • あとがき

読んでもらって、記憶の新しいうちにこんなことを言うのもアレですが、思いついた段階では僕はこの作品がすごくいいものに思えたのです。…だけど、書いているうちにいかに自分の妄想が独りよがりで、はみ出しものの考え方だったのかを悟らされ、結局3日も費やしてしまいました。


「SSなんて設定を自分で考えない手抜き創作だ」とこれを書くまでは思っていた部分があり、現に1つ目の志熊理科が主役のSSは書いているときも、書き終わっても、爽快感しかありませんでした。

だけど、今回は全然違った。原作読んで色々と深読みした僕の思い込みが作った虚像を文章に落とし込もうとしてしまったがために、これがすごく辛い作業になってしまい「もうやめたい。でも、前編書いて失踪するのもやだ」と思いながら泣く泣く書いた感じになってしまった。

というわけで、創作カテゴリの作品で一番納得できないのはこれです。とくに前半があまりにも平面的な展開で、「この次どうなるんだろう」という続きを読みたくなる感じがなくなってしまったところがすごくダメだったと、腹でも切りたいほど反省しています。(まだ、やりたいことがあるから切らないけど。)

そんな、駄作を最後まで読んでいただいたことに心底の感謝と、読者様のその優しさが報われる出来事が起こるよう祈るばかりでございます。



・作品の話
モチーフは高校時代に部活にこなくなった友達を電話で説得した体験をきっかけにこの作品を書きました。

何が不満で、何でやる気がでなくて、どうして部活にこなくなって…そういう話を1時間以上かけてやった。(電話代が高いと母に怒られたけど、それを3人やり抜いた)

10人の部活の3人抜けだったから、僕も顧問のお師匠様も必死で「帰ってきてくれ」と思いながらやった。

はがないの7巻で初めて本音が出てくる。ギスギスし始めた関係に対して初めてメスを入れる人物が出てくる。そのシーンを見たら、高校時代の事を思い出して、「スマートじゃないけど、そういう事をやらないと乗り越えられない壁がある」って事を伝えたくて、あるいは変わった先にある新しいものを信じて欲しくて自分なりにまとめました。


結果論から言うと、僕はその友達達に電話で交渉した事で信用された。お師匠様にも信用された。だけど、部活が一つになったことで、もう御役御免になった。…というのも引越ししていて、2年生の部員がこなくなった時期には僕はもう部外者だったのだ。

部外者が、自分の理想とか思い出を守るために命をかけてそれをやった。

僕にとっての夜空というのはそういう女性です。性悪女だとはがないファンに叩かれていますが、彼女は10年前の思い出を守ることに必死で、それが最優先だからこそ、小鷹の隣にいて、時間を経ることに小鷹に甘えるようになっていく。

僕は反対に肉のSSが書けない。というのも、あれは人間ドラマを付け加えるようなキャラじゃない。安直なシナリオなら、イラストがかける人がやったらいい。何ページもかける文字書きをする人間はもっとマニアックな事をしないといけない。

だから、そのマニアックなことを夜空や理科でやった。理科の方は自分でも読み返したくなるクオリティでかけたけど、夜空の方はこんなに言い訳をしないと納得ができないほど、独りよがりな作品になってしまった。


僕の駄文が夜空ファンを増やすとは夢にも思わないが、少しでも夜空の良さを分かってくれる人がでたら幸いだと思います。