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かくいう私も青二才でね

知ってるか?30まで青二才でいると魔法が使えるようになるんだぜ?

【はがないSS・三日月夜空】 夜空がゴスロリを着るだけ(前編)


前回、志熊理科のSS『【はがないSS・志熊理科】言えない気持ちを…』を書いたところ、検索エンジンでバンバンヒットしたほか、Twitterでもフォロワーさんから「理科というマイナーなキャラを攻めたところも、内容もよかったよ」と言われた。

そこで、「僕は友達が少ない」シリーズでもう一人の不人気キャラ「三日月夜空」のSSも作ろうと思う。
…前作同様ネタバレ大ありの原作ファンのためのSSです。原作を僕が解釈して、夜空というキャラを書いていくので、アニメのものと少しイメージが違うかもしれません。

記事の内容

  1. 夜空SS「夜空がゴスロリを着るだけ」

あらすじ(6巻のある部分の要約)
文化祭の出し物について話し合った際の事である。メイド喫茶が提案として挙がり、各々がメイド服姿で接客の実演をしてみせた。…その日の放課後にこっそりとメイド服を着用した夜空に…

話はこの前後から始まる。

(談話室4にて)
「うむ…我ながら似合っているではないか。」
夜空は自分のメイド服姿をチェックしながら言う。…正直、夜空にとってはかなり刺激の強い代物だった。というのも、普段「ボーイッシュ」だとか「男でもきそうな服」を着る夜空が急に萌えアイテムである、メイド服を着たのだ。
「似合う?いや、それでは不足だ。そうだな…【違うの自分を発見した】というところか。あれだ。かわ…。いや、私が言ったら自画自賛だし、かわいいなんぞ私の趣味じゃない!!」
と一人試着会を悶々と葛藤しながら楽しんでいる時のことだった。

ガチャ…
「……」
「……」

小鷹が入ってきた!『【一人楽しく、メイド服?私らしくもない!】しかも、幸村に羞恥プレー目的で着せてきたメイド服姿を…こ、こいつに見られるなんて!!』とあれこれ考えているうちに、蒸気のような熱い何かがこみ上げてきて…それが夜空の顔を真っ赤にさせた。

「こ、これは、あの、あう、あわ……!」
言葉にならない。それもそのはずだ。「ほかのみんなが着用した時に、可愛いと思ったから自分も着た?」言える訳がない。まして、10年来私の事を男だと信じ続けてきた"タカ"の前でそれを言う?自分が一番楽しい時間を過去にしてしまうようなことを夜空のことを言えるわけがなかった。


それを見た小鷹が去った事でこの場は収まった。…もちろん、ひたすらに恥ずかしい気分で放心状態になった夜空としては小鷹に対して「あれはメイド服が破れていないかどうか確かめていたのだ」と言い訳をしたのだが…話はそれだけで収まらなかった。


フリフリが気になる。
随分と時間が経ったが、メイド服やゴスロリの事が頭から離れなかった。というよりも、夜空が忘れようとしても連想させるようなモノ・事が周りにたくさんあってちらつき続けた。

星奈のギャルゲーにゴスロリやメイド服の女性が出てくる度に…メイド服を着せた幸村の事を見るたびに自分がメイド服を着て、それが自分でも驚くほど似合っていた事、そして、事もあろうボーイッシュだとか男っぽい格好を貫いてきた夜空がこういう服に興味を持ち始めていた衝動と葛藤する日々が続いた。

「おい、幸村。」
「なんです?夜空のアネゴ。」
小鷹がいない時間を見計らって部室で夜空がこんな質問をした。
「か、仮の話だが…もしも、私がめ、メイド服やゴスロリを着るような事があったらどう思う?」
「ブッー」
星奈が吹き出す。それを無視して夜空は入口の方に立っている幸村に尋ねる。
「?と、言いますと?」
幸村は怪訝な顔でこちらを見る。普通の人からすれば、まして女同士の会話で「私がメイド服・ゴスロリみたいなふりふりな洋服を着たら似合うかな?」という会話がそれほど変でもない。まして、「仮の話だが、もしも」なんて確率の低いシチュエーションがではなく、服自体はあるのだからあとは自分が着ると決めたら「もしも」も何もない。幸村はそう考えたため、夜空に振り返した。

「最近、文化祭の出し物を決めていただろ?その時にメイド服が挙がったということは私も着る可能性があるだろ?そうなると私がメイド服を着る、もしくはメイド服に準じたフリフリの洋服を用意することになる訳だが、それは変じゃないか?」
「どこがです?アネゴは美人ですから…何でもお似合いだと思いますよ。」
夜空が出す質問の趣旨が幸村にしっかりと伝わらない。幸村自身は「変」というのが「キャラ的におかしい」という意味じゃなくて、「メイド服姿がどうか」という話と捉えていた。幸村はお世辞でもなんでもなく、正直に色んなところで私服を見た限り「似合う」と自分のセンスで判断して言った。…そもそも、「真田幸村のような日本男児」を目指す日本史オタクの彼が社交辞令など言う訳がない。
「そうか。ありがとう。」
夜空は幸村から視点をそらして、今度はソファーに腰掛ける理科にも聞いてみる。

「理科、お前は私がメイド服などのふりふりの類を着ることについてどう思う?」
「理科はいいと思いますよ。女の子らしくて。」
『女の子らしくて』という言葉が脳内でこだました。
「…わ、私が女の子らしいだと!?」
その時夜空に電流走る。…しかし、理科はわかってないのか、冷めた対応。
「どうしたんですか?夜空先輩が女の子らしいと変ですか。少なくとも理科よりはずっと女の子らしいと思いますが…。」
「き、貴様の基準で語るな痴女!…へ、変じゃないのか?」
夜空はいかにも「お前が女の子らしいとおかしい」と言って欲しそうに、搾り出すような言い方で問うた。しかし、理科はそれを見て全然違うことを考えた。
「何が変なのか理科にはわかりません。しかし、夜空先輩がゴスロリを着たいということだけはよくわかりました。」
「!?ちが、違う。それはお前の思い違いというものだ。」

夜空のあわてふためいた表情を横目でニヤリとしながら星奈が見ていた。
「肉、何がおかしいんだ?お前はゲームの中にでも入っていろ!」
「なによそれ。…いいわ。私はあなたが女の子らしかろうが、ゴスロリだろうが別に興味も何もないから。」
その場こそ星奈はゲームに目線を戻したが、耳は夜空・理科の会話に集中していた。普段いじめっ子枠の夜空が理科に言いくるめられようとしているのだから、そういうシーンを見逃す訳にはいかない。

「…わかってます。ところで、夜空先輩。オールシーズン着られるゴスロリがちょうど理科室に保管してあるんです。知り合いに貰ったのですが、是非見てもらえませんか?文化祭で実際に着るかもしれないので是非、サイズが合うかどうか確かめるのも兼ねて一度来てもらいたいのです。」
理科はドヤ顔気味の勝ち誇った表情で夜空を見た。夜空はウズウズとしながら考え込んで…
「さ、サイズ合わせなら仕方無いな。準備は早くやったほうがいい。理科室に行こうか。」



・理科室にて
「似合います!…先輩って何着ても似合いますね!」
理科が『ユニバース』と言いたげな興奮気味の表情で、夜空のメイド服をべた褒めした。
「だ、誰にも言うんじゃないぞ!!」
夜空は耳まで真っ赤にして、恥ずかしがりながら自分のゴスロリ装着後の姿を見る理科に頼み込んだ。理科は意外そうな顔で問う。
「『小鷹先輩にも』ですか?」
「あ、あいつと肉何か私がゴスロリと聞いたら、笑うに決まっているだろうが!!」
そんなことはないと思いますが…
「何か言ったか!」
「いいえ。なんでもないです。」
…理科は考える。『いや、そんなの損ですよ。せっかく夜空先輩がこんなに似合っているのだから、小鷹先輩や幸村君が見たほうが喜ぶ。…本人は部室では滅多に着ないだろうし、メイド喫茶にすると決まったわけじゃない。』考えたの末に、理科はこう結論づけた。
「夜空先輩。良かったら、その服もらってください。知り合いからの回りものですが、知り合いも私もいらないのです。」
スケベ心を匂わせる表情で、夜空は短い髪の毛をいじって理科から目を背けながら言う。
「しかし、私だってメイド喫茶にならないと…」
「着ます」
『着ないかもしれないぞ』と言いかけたところで、すかさず理科はセリフをとって、続ける。
「服は似合う人が着るんです。そういう風にできてるんです。」
空っぽのアドリブでうそぶく理科を見て、夜空は合わせる。
「よくわからないが…そこまで言うからにはもらってやることもやぶさかではない。…いや、ここはもらってやらないと失礼だな。」

『夜空のゴスロリ事件』はこれで収束したかに見えた。



続く→ http://d.hatena.ne.jp/TM2501/20111129/1322540652